金曜日, 4月 14, 2006

男はケイタイを閉じポケットにしまった。

男はバス停の前で父親との会話を終え、目黒法務局に行くために、男はバスに乗った。
目黒郵便局が最寄のバス停だ。
仕事もテンポよく進み、目黒郵便局に到着。
法務局に向かおうとバスを降り、数歩歩いた瞬間・・・。
「無い・・・・電話が無い。」
男は気が動転し、支給されたケイタイで、会社に電話した。
「あのー自分のケイタイ、机の上にないっすか?」
当然、ない。なぜなら、父親と電話していたのはその携帯なのだから。
若干の冷静さを取り戻した男は、すぐにバス停に戻りバス停に建っているポールを見た。
「あった!電話番号」心で唱え、早速電話。
「はい、こちら東急バス清水営業所です。」
「ケイタイをバスの中に、置き忘れたかもしれないのですが。」
「あ~、どの路線バスですか?」
「大岡山小学校の巡回バスですか。運行中は運転手と連絡が取れないので、戻ってきたら
確認いたします。巡回バスですと戻ってくるのが夜の9時くらいになるので、それくらいまでお待ちいただくことになります。」
「(そんなに待てるか!!あ!!そうだ。)巡回バスですよね?次に同じバス停に停まるのは何時ですか?」
「いや、仮に同じバスに乗れたとしても運転手は所有権の確認が出来ないので、お返しは出来ないんですよ。」
「(ごもっとも)あ!!でも、まだ運転手さんが見つけてなければ落とした場所が判るのは自分だけじゃないんですか?」
「そうとも言えるんですが・・・・・、とりあえずお名前とお電話番号をいただけますか?」
「はい、○○と申します。電話番号は*******です。」
「かしこまりました。では、見つかり次第お電話させていただきます。」
「あ、よろしくお願いいたします。」プツッ、ツーツーツー。「フーやれやれ。」っておい!!巡回時刻聞いてねぇよ!
男は電話を再度かけ、違う受付に時刻を確認した。
「降りたのが2時45分前後なんですが・・・。」
「それだと、3時2分か3時5分ですね。」
聞き分けのいい受付でよかった。しかし落ち着かず、男はもしかしたら誰か気づいてくれるかもしれないと思い、何度も自分のケイタイを鳴らした。何度も・・・何度も
電話を切り、目黒通りの反対側にわたるため信号待ちをしていた時、巡回バスが一台通り過ぎた。
「(あれは、さっき言われた時間のバスじゃないからな。フーー。」
反対側に渡り指定時刻のバスを待つ。
何台か違う路線のバスが通るも惑わされず、3時2分のバスに乗り込む。
・・・・ない。というか、さっき乗ったバスではない。
じゃぁ、3時5分のだなと思い、3時5分のバスにも乗る。
これも違う!?男は混乱した。
もしや・・・・!?さっき通り過ぎたバスなんじゃぁ。男は東急バスに電話をかけた時間を確認した。
[14時44分]やられた・・・。
そうこうしている内にいくつかのバス停が過ぎ乗っていても意味がないことに気づき、あるバス停で降りる。
そこのバス停で来るバスにその都度「ケイタイを落としたのですが、ありませんでしたでしょうか?」と聞くが当然、運転手は「さぁ?営業所に確認してみてください」ばかり。マニュアルなのか?
自分のやっている事に不毛さを感じた男は、諦めの気持ちが次第にあらわれてきたのと、仕事をしなければいけないという気持ちとがないまぜになった半ばやりきれない心持のなか、目黒通りの反対側に渡り目黒法務局に向かうことにした。
バスが来、それに乗り込むと「(もしや!?このバスなんじゃぁ!?)」
しかし、座っていた座席にはおそらく30代の女性と40代の女性二人が座っている。もし確かめて無かったらかなり恥ずかしい状態になる!その内30代とおぼしき片方の女性が降りた。勇気を出せばその座席に座れば確認出来る。しかし!!その座席付近をずっと凝視していたためか女性はかなり男に不審の眼差しを突き刺す。座る勇気が出ない・・・・。
男はマナーも無視し、車中で社用ケイタイで自分のケイタイを呼び出した。
もしその座席に男のケイタイがあれば、何か反応してくれるかもしれない。
だが、女性のリアクションはいまいち微妙でわからない・・・。
わからない・・・わからない・・・。
「(やっぱり、違ったのか!?)」男は意気消沈しかかっていたその時、バスが信号で停まりエンジンが切られる。
[ヴゥー・ヴゥー・ヴゥー]ケイタイのバイブ音が響く。まさか!?一度ケイタイの呼び出しを切る。そしてもう一度呼び出し。
[ヴゥー・ヴゥー・ヴゥー]こ・これは!?
男は女性の座席の後ろに座りもう一度呼び出す。
「あのーすいません。そちらの席に・・・・」男は勇気を出し女性に声をかける。
男の声に振り返り腰が座席から離れた時、バスの壁と座席に挟まれた黒い物体を発見した!!
「あっ!ありました!!これ僕のなんです!探してたんです!!」男は歓喜と安堵の入り混じった声で女性に説明する。
「さっきから、ずっと鳴ってて困ってたんです。」
「(おばさん、すいません。)」
そして男は目的地の目黒郵便局で降りた。
長い45分だった。男は仕事を終え、帰路についた。

男がバス代に費やした費用       合計1050円
男が自分のケイタイを呼び出した数  28回
男がケイタイを見つけた喜び      PRICELESS

お金じゃ買えないスリルとサスペンスとドラマがありました。
みなさん、車を降りる時には気をつけましょうね。

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